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法改正2026-04-02

2026年社会保険適用拡大の対応ポイント完全ガイド

2026年社会保険適用拡大の対応ポイントについて、厚労省公式手引書に基づいて分かりやすく解説します。必要書類、手続きの流れ、注意点をまとめました。

目次

取得した手引書データをもとに記事を作成します。


2026年 社会保険適用拡大の対応ポイント|人事・総務担当者のための実務ガイド

適用拡大の全体像——2026年時点で押さえるべき現状

令和4年(2022年)10月に従業員数101人以上規模の企業への適用が始まり、令和6年(2024年)10月からは従業員数51人以上の企業にも対象が拡大されました。2026年現在、この段階的な拡大はすでに施行済みであり、51人以上の企業にとって短時間労働者(パート・アルバイト等)への社会保険適用は「やるべきこと」ではなく「守るべきルール」となっています。

しかし、人員の入れ替わりや新規採用、労働時間の変動などにより、「いつの間にか未加入者が生じていた」というケースが依然として後を絶ちません。本記事では、厚生労働省・日本年金機構発行の手引書(社会保険適用拡大ガイドブック等)に基づき、制度の要点と実務上のつまずきポイントを整理します。


適用対象企業の判定方法

「従業員数51人以上」の数え方

適用拡大の対象かどうかを判定する「従業員数」は、厚生年金保険の被保険者数で判定します(健康保険の被保険者数ではない点に注意)。

また、ある時点の頭数をそのまま数えるのではなく、直近12か月のうち6か月以上において被保険者数が51人以上となることが見込まれる場合に適用対象となります。

法人の場合は、法人番号が同一であるすべての事業所の合計数で判定します。複数の店舗・支社を持つ企業は、各拠点の被保険者数を合算してください。個人事業所は事業所ごとのカウントになります。

新たに51人以上となった場合は、その旨を日本年金機構へ速やかに届け出る必要があります。


加入対象となる短時間労働者の4要件

社会保険(健康保険・厚生年金保険)に新たに加入する対象者は、以下の4要件をすべて満たす必要があります。

| 要件 | 内容 | |------|------| | ① 週の所定労働時間 | 20時間以上30時間未満 | | ② 所定内賃金 | 月額8万8,000円以上 | | ③ 雇用見込み | 2か月を超える雇用の見込みがある | | ④ 学生でないこと | 昼間学生は対象外 |

「月額8万8,000円」に含まれない賃金

所定内賃金(月額8万8,000円の判定基準)に含まれない項目は次のとおりです。誤って算入しないよう注意してください。

  • 残業代・割増賃金
  • 賞与・臨時的賃金
  • 通勤手当
  • 精皆勤手当
  • 家族手当

実労働時間が契約を超える場合の特例

雇用契約上の所定労働時間が週20時間未満であっても、実際の労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、その後も継続が見込まれる場合は、3か月目から加入対象となります。シフト管理が流動的な職場では見落としが起こりやすいため、定期的な実態把握が欠かせません。


実務対応の進め方

ステップ1:対象者の洗い出し

全パート・アルバイトについて、上記4要件への該当状況を確認します。厚労省の手引書では、表計算ソフト(Excelなど)で従業員一覧表を作成し、要件適合状況と加入希望の有無を一元管理する方法が事例として紹介されています。

ステップ2:従業員への説明・周知

加入対象となる従業員には、社会保険加入のメリットと手取り額の変化を個別面談や説明会で丁寧に伝えます。主な説明ポイントは以下のとおりです。

  • 厚生年金で年金が「2階建て」に:国民年金(基礎年金)に加えて厚生年金が上乗せされ、老齢・障害・遺族年金の保障が手厚くなる
  • 傷病手当金:病気・ケガで働けなくなった場合、3日の待機期間後から最長1年6か月、給与の3分の2相当が支給される
  • 出産手当金:産前42日・産後56日の期間、給与の3分の2相当が支給される
  • 保険料は労使折半:保険料の半額を会社が負担する

手取り額の変化は、厚生労働省が提供する「手取りかんたんシミュレーター」や、将来の年金試算ができる「公的年金シミュレーター(https://nenkin-shisan.mhlw.go.jp/)」を活用すると、従業員が自身のケースを具体的にイメージしやすくなります。

また、配偶者が家族手当・配偶者手当を受給している場合、社会保険加入によって支給対象外になる可能性があるため、配偶者の勤務先へ確認するよう従業員に促すことも重要です。

ステップ3:雇用契約書・就業規則の見直し

所定労働時間や賃金の記載が実態と乖離していると、加入義務の判定に支障が出ます。契約書・就業規則の内容が現状に合っているか確認し、必要に応じて改訂してください。

ステップ4:被保険者資格取得届の提出

対象者が確定したら、**「被保険者資格取得届」(健康保険・厚生年金保険)**を日本年金機構に提出します。e-Gov等を活用したオンライン提出が可能です。

ステップ5:給与計算体制の整備

新たに社会保険料控除が発生するため、給与計算システムへの反映と標準報酬月額(社会保険料の算定基準となる月額報酬のこと)の設定を行います。標準報酬月額は資格取得時の賃金をもとに決定し、以後は毎年の定時決定(算定基礎届)や随時改定(月額変更届)で見直します。


活用できる支援制度・助成金

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)

短時間労働者を新たに社会保険に適用した際に、手当の支給・賃上げ・労働時間延長等を実施した場合に申請できます。人件費増加を補填する観点からも積極的に検討してください。

専門家活用支援事業(無料)

顧問社会保険労務士がいない事業主は、年金事務所を通じて社会保険労務士の無料派遣を依頼できます(専門家活用支援事業)。従業員説明会の講師や個別相談対応として活用できます。

その他の支援

  • IT導入補助金:最大450万円(採択審査あり)
  • よろず支援拠点・働き方改革推進支援センター:労務管理全般の無料相談窓口

従業員50人以下の企業も検討できる「選択的適用拡大」

従業員数が50人以下の企業であっても、労使合意を経ることで、51人以上の企業と同じ加入要件でパート・アルバイトを社会保険に加入させることが可能です(選択的適用拡大)。

アンケート調査(JILPT、2022年)では、パート労働者の45%が「社会保険に加入できる求人」を「魅力的」と回答しており、採用競争力の観点からも導入を検討する価値があります。なお、選択的適用拡大を実施した企業は、「中小企業生産性革命推進事業」における補助金の応募要件緩和・審査加点等の優遇が受けられます。


注意事項

  • 本記事の内容は、厚生労働省・日本年金機構が発行する「社会保険適用拡大ガイドブック(事業主向け)」等の手引書に基づき要点を整理したものです。個別事案への適用可否については、必ず最新の法令・通達を確認のうえ、所轄の年金事務所または社会保険労務士にご相談ください。
  • 「従業員数51人以上」の判定基準(厚生年金保険の被保険者数・12か月中6か月以上)は、企業規模が変動した場合にも継続的な確認が必要です。
  • 所定内賃金の月額8万8,000円の算定にあたっては、通勤手当・賞与・残業代等が含まれない点を必ず確認し、誤った判定が生じないよう注意してください。
  • 雇用契約書や就業規則の記載と実態が乖離している場合、遡及適用や追徴保険料が発生することがあります。定期的な契約内容の棚卸しをおすすめします。
  • 保険料率や助成金の支給額等は改定される場合があります。最新情報は日本年金機構または厚生労働省の公式サイトでご確認ください。